「環太平洋連携協定」(以下略称であるTPPと表現いたしますが)等自由貿易協議に対応した静岡県が取り組まねばならない農業施策についてお伺いいたします。
私はTPPやFTAなど貿易自由化協議については、現在の日本を取り巻く国際情勢に鑑み、日本の将来を考えると、参加は不可避ではないかと感じています。
私の地元は浜松市浜北区でありますが、このTPP論争がはじまってから、多くの区内農家のみなさまと意見交換をしてまいりました。意見聴取の結果を端的にまとめると、『国際競争にさらされても米と一部の畜産品を除けば、十分に競争力があると思っている』とのことであり、TPP等貿易自由化協議については『早期に参加し、日本農業の多面的機能や文化的機能、そして農政の独自性を説明し必要な配慮を求めてゆくなど、戦略的な外交を展開すべきである。ルール決めが終わったあとに参加してもルールを変えることはできない』という肯定的かつ建設的な意見も多く、今静岡県がすべきことは、将来を見越して国際化時代に合致した農業政策を構築することである、と実感したところであります。
現在静岡県の取り組んでいる耕作放棄地解消策の促進や農地の集積・集約化についても、競争力強化のために、より意欲的に取り組むべきでありますが、実は農地についての問題の多くは国の規制や管理下にあります。
そこで、このたび政府の「食と農林漁業の再生実現会議」のメンバーとなられた知事におかれましては、現在農水省の法律によってがんじがらめにされている日本の農地政策の改善と、「農作物こそ適地適作」の大原則にのっとった地域の実情に即した、地方主権型農業政策の提言および議論を期待するものであります。
また、一方で中山間地等競争力の弱いとされる地域もありますが、それらの地域に対する対応も含めて、知事の農業再生にかけるご所見をお伺いいたします。
また、県として積極的に取り組むべき施策として、たとえば「水や環境を保全していくという観点などからも考えた、農業の多面的機能強化施策」や「産業・工業技術の農業への応用促進策」など国際化対応へのお考えをお伺いいたします。
答弁者 川勝知事
・『食と農林漁業の再生実現会議』では、高いレベルでの経済連携の推進とわが国の農業・農村の振興を両立させ、持続可能な力強い農業を育てるために、対策を検討推進する、としています。私も地域の特色を活かした、競争力のある農業のための制度改正や支援策について積極的に提案をしてゆく所存。
・「食育」については、地産地消を柱にして「食育週間」などでの学校給食への導入など積極的に支援してゆきたい。
・都市と農村の交流については、”実は農山漁村にこそこれからの未来がある”が思っている。その一環として『日本一美しい村運動』があります。伊豆半島の松崎で今年開かれた『全国棚田サミット』や各種雑誌など今後も美しい村づくり運動に積極的にかかわってゆきたい。
・自給率については、カロリーベースの自給率ではおかしい。地域の食文化や医食同源、薬食同源という考えのもと、日本一の219品目の農林水産品の生産を誇る静岡県を「食の都」として位置づけながら、生産額や産出品の内容を重視した自給率という考え方に変えてゆきたい。
・JAについて。有用かつ重要な役割に対して敬意を払うが、金融業に偏りすぎているところがある。もう一度農の現場に立って、現在の「所有から活用に」「所有から利用に」という方向に動き出している日本の農業において、JAがその媒体となってほしい。
・TPPについては、私はポジティブな立場だ。世界において農業・食の安全について、それぞれの地域の問題について情報収集し、議論をし、理解しあわなければならない状況の中で、席にもつけないようでは、多方面に置いて影響がでてくる。これは、武力戦争が起こるわけではないので、しっかり言論を通して、意見を聞き、主張をし、収めるところに収めてゆく場を作り上げてゆくことが肝要である。それが、パシフィツクオーシャンの一角に位置している日本の姿勢でなければなりません。