いま県庁の行き帰りの電車のなかで、
「人間の由来」という本を読んでいます。
あるかたに「非常に面白いから」と奨められていて
図書館で借りていながら、なかなか読めずに
県庁のデスクに積んであったのですが、
ようやく少し余裕ができたので読み始めました。
この本は霊長類研究の第一人者であられる
河合雅雄さん(先般ご逝去された河合隼雄さんのご実兄)
の著書だが、ただの研究書ではなく
鋭く、そのなかにユーモアのある解説書で、
いっきに引き込まれてしまいました。
とくにチンパンジーの生態からは
「なるほど人間そのものではないか」というような
複雑な心理の描写にあふれています。
一文を引くと・・・
『食物を所有する者への物乞いにはいろんなタイプがある。
掌を上にして人間の物乞い行動そっくりなもの、
所有者の手や大腿にふれたり腕をそっと噛むなどの懇願、
そして、じいっと所有者や食物を見つめる凝視がある。
じいっと物欲しげに見つめられると所有者は気分が
落ち着かなくなって与えてしまう。
これは直接的な行動でないだけに、心理の複雑さを
反映していて興味深い』
ほかにも、『1年ぶりにアフリカに調査に行ったら、木の上に
顔見知りのヒヒがいて、片手をさしだしたら握手をしに木から
降りてきた』とか、年寄りの面倒をよくみるといった記録、
ボスの座をめぐって派閥を形成したり、策略を練ったりと
政治的な観察もあったりして、ほんとうに面白い。
わたしもまだ読みかけですが、これは表題どおり
なるほど「人間の由来」かくありなん、と唸ってしまう
ご一読をオススメする一冊です。