尖閣諸島巡視船衝突問題で拘束していた中国漁船の船長を処分保留のまま釈放。
唖然とした。としか言いようのないニュースでした。
しかも、「那覇地検の判断」という。
これだけの外交問題だけに政府の関与は当然あってしかるべきゆえ、
表向きの発表ということでしょう。
なんにしろ、返す返すも現在日本の外交の稚拙なこと極まりない、と痛感します。
もし陸奥宗光が現在に生きていたら机を叩いて暴れたでありましょう。
したたかな中国に対して、あまりにもストーリーがなさすぎたように感じますし、
中国は見事なまでに次々と怒涛のごとくカードを切ってきました。
中国外交はしたたかかつ覇道主義です。
実際、フジタの社員の拘束、海外向け英語放送でのプロバガンダ、
政府高官が次々と繰り出す「譲らない」強気な発言。
だいぶ日本の外交当局は揺さぶられたことでしよう。
国交大臣と中国の大臣の面会を断らせたり、
クリントン国務長官に「尖閣は日米同盟発動の範疇」などという
当然の発言を引きだしただけでぬか喜びしたり・・・
大人の対応ができていたとは言い難いと感じています。
ただし「力の外交」や「強気の外交」をただ単純にすべきだ、
ということを唱えるわけではありません。
外交とは、2国間関係だけでなくどれだけ多くの国にコミットメントさせて
より複雑化、より難解な状況に持ち込んでこそ、2国間における比較小国に
勝機が生まれてくるのであって、その状況を作り出すまで
どれだけ辛抱できるか、というものだと私は思っています。
そういった意味では、やはり”外交下手”と言わざるを得ないでしょう。
残念ながら、これで日本外交は世界でさらに見下されることでありましょう。
また、もうひとつ残念なのは
今回の件に限らず、何事にも考えかたの違いはあるので、当然批判はでます。
でも、それを喜んで報道し、国民のモチベーションを落とし
日本国を自ら弱体化させるのもいかがなものかと思います。
何のための国家権力か、と言いたくなります。
これではひいては中国の思う壺です。
国益を損なうときは野党や報道にもキチッと説明して
理解を求めることがあっても良いと私は思います。
やはり政府にも永田町にも霞ヶ関にも
「国難」という認識が甘いとしか感じられません・・・
さて、この状況での前原新外務大臣。
今回の判断はどうやら総理と官房長官主導に見えましたので、
ここからの対中外交の巻き返しをどう組み立てるか、早速苦しい局面です。
ちょうどアメリカにいるのですから、外から日本の置かれている
地政上の組み立てをお考えになるいい機会かもしれません。
最後に私見としての外交感を申し述べておきます。
まずは、落ち着いて当然のこと(たとえば尖閣は日本の領土というようなこと)
については慌てず騒がず挑発に乗らず、淡々とそれぞれの仕事をこなす。
一方で、さまざまなシュミレーションを起動して、
考えうるすべてのルートで国益のための工作、交渉、運動を展開し
最後には勝機をつくりだす。
こういう「ダブルフェイス」を使えないようでは外交ではありません。
「日本国の危機管理体制」をもう一度考え直すべきです。
もはや、アメリカの傘の下でぬくぬくしてられない時代になっています。
日本が自ら考え行動することが出来ない限り日本に未来は暗い。
「外交を描く」ことのできるリーダーが育たなければなりません。