東伊豆町の温泉観光地稲取は
昨年低迷する観光産業の活路を見いだすために、
思い切ったチャレンジをして全国的に話題になりました。
覚えていらっしゃるかたも多いかと思いますが、
「観光協会の事務局長公募。年収700万円。一戸建て住宅付」
というものです。
そして、1281人の応募者のなかから
選ばれたのが渡邊法子さん。
もともとNPO法人「まちづくりサポートセンター」の
事務局長をされていたり、京都の丹後半島の観光振興に
取り組まれたこともあり、期待は大きかったので、
今回は楽しみにしていってまいりました。
結果、一言で言うと“非常に感銘を受けました”。
1月20日からはじまる
「つるし雛まつり」のメイン会場である
常設の「つるし雛の館」を見せていただき、
渡邊さんのお話を40分程度うかがったのですが、
しっかりと「任期2年間」のビジョンと設計図ができていて、
それに対してしっかりと戦略的に
ときに臨機応変に取り組んでおられることが
しっかり伝わってきてすばらしかったです。
概要を書いておきます。
①住民の意識改革
稲取は住民の74%が観光に従事しているだけに、
住民ひとりひとりが「ホスピタリティ」をもつことが重要。
ゆえに、「ひとりひとりにできることをしてもらう」
ということを浸透させる。
まちのひとたちを「巻き込む」ために、
禁止されていた海に飛び込む遊びを復活させたり、
ボランティアの応援団をつくったりと、
しっかりまちをその気にさせている。
②あるものをさがす
ないものねだりや他の模倣だけでは、
観光地としての魅力も限られるし特徴がでない。
だからこそ、まず埋もれている地域の観光資源を探す。
結果、「つるし雛発祥の地」としての売り出しを押し立てた。
2月には山形県酒田、福岡県柳川と「3大つるし飾りサミット」
を開く予定など、
その実行力と訴求力はさすが。
③予算の獲得と代替策
どこでも悩む予算不足。
就任後すぐに着手したのがこの「予算確保」。
経済産業省、国土交通省、静岡県の予算と使えるものはすべて獲得。
さらには、
「市場調査なんて、業者を使わなくても自分たちでもできる」と
率先してまちのみなさんと観光客と話す聞く議論する。
④ 観光協会の経営の安定化
とはいっても、「経営」をしていかなければならない。
そこで、第3種旅行業資格を取得して会社を設立。
観光案内業務の手数料や
タクシー会社と契約してミニツアーの企画販売などで収入を得て、
PR事業費に充当したりしており中長期計画をたててゆく
基盤をしっかりと作りつつあります。
「観光予算は、今までの“イベント型”だけのような、
“明確なビジョンのない使いかた”をしないことだ」という
哲学をしっかりともっての、
多層的な組み立てとさまざまなアイディアの引き出しをもっている
渡邊事務局長という“得がたい人材”を得た稲取は、
活き活きと活気と輝きを取り戻しつつあるように感じました。
非常に参考になることが多く、
この4月静岡県に発足する「観光局」の施策に
大いに反映させてゆかねば、という内容でした。