ここは、世界的に有名な施設です。
精神科病院が廃止され、それにかわる施設として臨床型から
“人の全人生とその社会的背景の照準を合わせた”精神保健モデルに
変革したカタチとして世界の注目を浴びている施設です。
これは、1978年にイタリアの180号法
『自発的および強制的な病状確認と保健医療処置法(通称バザーリア法)』
(その後制定された833号『国民総合健康計画法』に吸収)により、
精神医療のありかたをこれまでの「治安モデル」から「適切な治療や
ケアを受け健康を回復するための人間の権利としての治療モデル」に
変えるのだという意思が強くにじむものとなり、治療は強制するのではなく、
当事者である患者の自発性と任意性に重きを置くかたちへの変革を迫られました。
その法律制定による制度移行の成功例がこのトリエステ精神保健局なのです。
フリウリヴェネチアジュリア州の人口は約120万。
旧病院には、1200名余の入院患者がいましたが、それを段階的にベット数を削減。
4か所に24時間オープンの地域サービス網をつくり地域精神保健センターを設置。
各センターは5万~6万5千人の診療圏を形成。
各センターのベット数は4~8。市内の総合病院の精神科にもベットは6。
合計でも30程度ということになり、1200床からすると激減です。
センターはあくまで拠点であり、ほかにデイケアやグループ活動、家庭訪問などが
205名の職員と23名の精神科医師、支援NGOなどによって展開されています。
治療方針は個人個人によって違うので、それぞれにあったプログラムが組まれており
精神保健局には、各自の目的の活動をするために来所をしていました。
社会性を身に着けるために食事を摂りに来ている人、新聞を読みに来ている人、
薬を飲みに来ている人、各種プログラムに参加しにきている人、
カウンセリングを受けに来ている人・・・
患者と思われるかたがたが、施設内でそれぞれが思い思いに自由に行動している。
そんな環境のなかで視察説明を受けましたが、患者と思われるみなさまからは
どことなく穏やかな感覚を受け、日本における精神病院やその種の施設で
お見受けする感覚との格差に衝撃を受けました。
また、重要なメニューとして職業訓練もおこなっていて、
社会の一員、社会参加、というスタンスが人権の確立という精神の
強い現れであると感じました。
そしてこのシステムで以下の3つが大切なことだと強調されました。
①ホスピタリティ
②出入り自由、24時間体制の確立
③地元のコミュニティを大切にすること
また、説明をいただくなかで、センター長から
『日本が入院患者比率が世界で一番高い』
『この施設にも、1981年に最初の日本の視察団が来たが、
その後何も改善がされていない』とお怒りをいただき、
『まずは政治家であるあなたたちが自分たちの背景から組み立てなさい。
そのうえで医師にも意識改革を、そして家族にも参加してもらうんだ』
と厳しいご指導をいただきました。
とにもかくにも、衝撃的な印象と深く考える示唆をいただいた視察となりました。