名高いドイツの「インダストリー4.0」への取り組み。
そのドイツの「インダストリー4.0」の頭脳、またはエンジンともいえるのが
このフラウンホーファー研究所です。
ドイツ全土に40か所66の研究所。23000人のスタッフ。
年間研究費は20億ユーロ。財源は30%が州、残り70%は独自財源。
この独自財源は主に企業からの委託研究費。
つまりここは、あらゆる産業・科学技術分野の応用研究を「実用化」するために
存在しているのです。いわば、産業界と研究会の橋渡し役。
大学とも密に提携をしており、各研究はプロフェッサーが主導。
プロフェッサーが主導するメリットは、
① 大学の研究をダイレクトに応用できる。
② 優秀な大学生の人材を確保できる。
事実、フラウンホーファー研究所は、毎年約1000人の学生を安価な賃金で
3年~5年の有期契約で採用。安価な賃金ではあるが、ここで博士号も取得でき、
契約満了後は6~7割の学生が産業界に就職している。これは、「人材育成」と
「人材の流動性」の見地からみてもすばらしいシステムでもある。
66の研究所は、現場責任者と現場の研究者で独自に戦略・戦術を立てて仕事を進める。
研究期間は3年から5年が基本で、実用化に向けての研究に特化する。
今回訪問したミュンヘンにあるフラウンホーファー研究所本部は、
ヘッドクオーター機能を持つが、それは大方針を決めるだけのことであり、
5年ごとに「戦略プラン」をつくるが、その折は66の研究所の責任者を集めて
トレンドを話し合い、テーマを決め、テーマを具現化するために予算配分をしてゆく。
創立は1949年。研究者であり、発明者であり、企業経営者であった
物理学者フラウンホーファー氏(1787年~1826年)にちなんで
「フラウンホーファー研究所」と命名される。
大きくは7分野の研究部門に分かれて、約9000件の契約を企業体と結んでいるが、
うち6割は中小企業体。企業規模による契約金額等の優遇制度はない。
中小企業へのテコ入れを特にしていないということで、実際中小企業体の動きは
まだまだ鈍く、大企業中心の企業体の動きをみているという状況とのこと。
ドイツには「マックス・プラーク研究所」通称MPG(エムペーゲー)という
公的研究機関があるが、こちらは理論重視、机上論の基礎研究が中心。
いわばノーベル賞をめざす研究をする機関。
あくまで「実用化」を重視する「フランウンホーファー研究所」とは対極をなす。
フラウンホーファー研究所には、日本代表部も含めて海外に出先機関があり
世界各地での共同研究にも取り組んでいる。
日本人のフラウンホーファー研究所への留学ないしは就職も可能。
また事務職員の研修もOKとのこと。留学、研修のそれぞれの条件は、
英語ないしはドイツ語が堪能なこと。渡航費用、滞在費用の個人負担。
以上が、フラウンホーファー研究所の概略であるが、非常に興味深い視察となりました。
日本の常識ではない理知的、合理的な考え方での戦略展開であると感じました。
また、このシステムはドイツに世界の技術力や頭脳を集積させるひとつのカタチでもあり、
ドイツが「インダストリー4.0」つまりは「第4次産業革命」の主役になれる可能性を
見せつけている、と個人的には強く感じています。
「次世代の力とはなにか」という問いに対して、私を含め多くの人が答えるであろう
「産業力」「技術力」「人材育成力」「世界への求心力」「独創性」「イノベーション」
というような答えを、“すべてできるよ”と言われたようで、驚愕も持って
この視察を終えました。あらためて、ドイツという国家の総合力の高さを
垣間見た気がします。
・・・大丈夫か日本!?